灯り ― 連載エッセイ ― 01 人は一人ではない
灯り
― 連載エッセイ ―
音楽と、言葉と、出会いと。
私はかけがえのない灯りに救われてきました。
人生では何度か、
自分では乗り越えることが、
できないのではという夜があります。
それでも、私たちの夜が、
どのような暗い闇に見えたとしても、
この世界には、
灯りを灯そうとする何かがある。
振り向けばこの人生。
多くの心ある人々の優しさに見守られ、
救われてきました。
孤独な年月もありました。
今も私は孤独を生きています。
それでも、この世界には、
いつも、どこかに灯りがある。
人は一人ではありません。
26年、歌を書くという稀有な仕事をして生きてきました。
国民的な歌手の方々に書いた歌を歌っていただくという、
自分にとっては奇跡のような景色を見てきました。
不可思議とも言える人生のあらゆる場面で、
人々の心の灯りに見守られてきた。
今は与えられた灯りへの感謝に、
報いることができるようにと、
小さな一歩一歩で日々を生きています。
見る人から見れば、
裏切りのようにも取れる生き方を、
選んだこともありました。
それでも、
本来は顔をお見せすることもできないと思うような方々も、
お会いすれば、
やはり心に灯りを分けてくださる。
人の心とは、元来、とても良いものである。
私は、それを真実として世界を見てきました。
私は、それを真実として歌を書いてきました。
人々の本来の良心。
それが今は、言葉や画像だけでは、
見えにくい時代でもあります。
私が生まれて初めて書いた自分のオリジナル曲。
それは『ピエロが夢を見つけた』という歌でした。
1週間だけ、夢のような恋をして、
夢のような暮らしをするピエロのお話です。
今、思えばそれは、
私の人生の雛形のようです。
高校生の頃、
孤独だった私を受け入れてくださった音楽スタジオ。
バンドに明け暮れた時代。
アパレル業界での若き思い込みと勢い。
営んでいたクレープショップでの学生たちの笑顔。
『楽園』という楽曲以降の音楽業界での出会い。
富山に帰ってきてからの素朴で肩肘張らなくてもいい、
地元ならではの暮らし。
詩人として、
伝えていきたい灯りを、
今また胸に灯して見つめる世界。
人生のあらゆる場面に、
あらゆる場所に、
灯りがありました。
私は精神的な混乱から、
何度か入院をするにまで至ったことがあります。
今はメンタルに不調を訴える人々も多い時代。
この文章に書いたことが、
そのような方にも、
届くことを願っています。
私のような詩人・作詞家が言うまでもなく、
世の中には、
本物の愛に見守られて育ってきた生命が多くいます。
自ら愛を育てた人々もあまねく多く存在します。
だからこそ、今も世界はある。
本物の灯りを灯すのは、
そのような人々なのかもしれない。
私は少し歪な人生を生きてきました。
私の灯す灯りは、
私なりの精一杯。
それでも、
この世界の循環にある大きな愛。
それは私の中にもあるのだということ。
あなたの中にもあるのだということ。
そのことを、
私は、この文章の中で、
あなたにも、
届けたいと思っています。
私の人生は歪な人生ではありますが、
面白い物語の人生です。
自分では普通だと思っていた人生も、
振り返ってみれば、かなり入り組んでいて、
これは誰が描いた物語なのかと考えてしまうほどに、
多くの人々のご縁が織りなした物語なのだと感じています。
それは私に限ったことではありません。
誰の人生も紐解けば、
とても、とても、とても不思議に満ちています。
誰の人生も角度を変えて見れば面白い。
この入り組んだ人生を、私たちはどう生きるのか。
迷うとき、打ちのめされそうなとき、
この世界には必ず、
灯りがあるのだという、
確かな真実が心にあるのなら、
どんなことも、
きっと乗り越えることができる。
灯りは目に見えるものとは限りません。
たとえ盲目であったとしても、
心の奥底には灯りが灯されている。
この文章で、私と一緒に、
この世界の”灯り”について、
考えてみませんか?
心の奥にある小さな灯りを、
少し明るくしてみましょう。
それは、きっと、
誰かのことを見守ることのできる灯り。
私たちの灯りは手から手へ
心から心へ、
伝わっていく。
いつまでも、
尽きたりせずに、
灯され続ける。
この本を読んでいるあなたの心。
それは私にとって、
一つの灯りです。
私の書いたこの文章が、
あなたの小さな灯りになれたなら、
私はとても嬉しく思います。
この連載エッセイに書かれたことは、
私の人生の中で出会った
いくつもの「灯り」の記録です。
詩人・作詞家
Makoto ATOZI
詩 出会い
私たちは
生きていく日々に
ひとつひとつ
キャンドルを灯していく
振り向けば
私の灯り
あなたの灯り
いくつもの出会いが
やわらかく
灯されている
過去も
今も
未来も
