作詞家 阿閉真琴のペーパーブランクスのノート

良い歌詞と良くない歌詞の違い | 26年書き続けて見えたこと

良い歌詞とは何だろうか。
逆に、良くない歌詞とは何だろうか。

音楽は趣向品なので、その答えは人それぞれだ。
それでも、ただ一つ、音楽という視点から歌詞の良し悪しを見るならば、
メロディーと言葉が一体化している歌は良い歌であり、
メロディーにそぐわない言葉が添えられた歌は
良くない歌と定義することができる。

ではメロディーと言葉が、
一体化している歌とはどのような歌を指すのか。
それは第一に、譜割り、作曲家の意図を純粋に汲み取り、
音の持つ言葉をそのままで表現した歌詞と言える。

メロディーの高低に合わせた母音の響き、
歌の高音部、つなぎの部分、締めの部分を
音楽的に聴かせる韻の踏み方。
詰め込みすぎない言葉。足りなすぎない言葉。
歌いやすい歌詞。聴きやすい歌詞。
ざっくりというならそのような特徴のある歌。
それを良い歌詞と定義することはできる。

では、良くない歌詞とは何か。
それは譜割りの美意識を意識できていない言葉の割り振り。
高音部に(う行)の母音を持ってくるなど、
歌い手への配慮に欠けた歌詞の書き方。
メロディーにのせるにはあまりにも響きの良くない、
愛の裏側のような冷たすぎる言葉・内容。
これらの歌詞もざっくりというと
悪い歌詞と定義できるのかもしれない。

ただし時代は変わった。
以前であれば歌にするには憚られた内容。
それらの内容の歌がヒットすることも、
現代では普通にあり得るようになった。

一番よろしくないと思えるのは、
書き手が何を書くかを、
まとまりきれずに書いたゆえに、
歌としてはまとまりながらも、
その内側に書かれていることには、
全く愛が含まれていない歌詞。

私は長く作詞を続ける中で、
一つの答えにたどり着いた。
良い歌詞は「感謝の塊」でできている。

だから良い歌詞の定義として、
もう一つ付け加えることができる。
私の作詞論で言うならばこれが土台・基礎になる。
それは歌を聞いた時に”感謝”が伝わってくる歌詞であるということ。

わざわざ改めて”ありがとう”という言葉を使う必要はない。
生きているということ。
朝日が昇り、夕日が沈み、朝日は何度も昇り繰り返すということ。
出会えたということ。
あなたがいるということ。
あなたがいたということ。
楽しいということ。
嬉しいということ。
悲しみの中にもある感謝。
あらゆる場面での感謝の気持ちを前提に書かれた歌詞。
それを混ざりっ気なく、素直に、
感謝から生まれる感情、
交わし合った言葉・表情・仕草に焦点を当てて書かれた歌詞。
私ならば、それを良い歌詞であると定義する。

逆を言うならば、近年増えている、
愛した人を蔑むような歌、愛のない恨み節、
これらの歌が10年以上愛されるということは、
あり得ないであろうと私は思う。

時代の変化により、もしも、
本当に人々の心が荒みきったとしたなら、
そのようなスラムな歌詞が残る時代もないとは言えない。
それでも、私は感謝の気持ち。
”人生の灯り”
それが素直に灯された歌詞。
それを良い歌詞であると定義したい。

そして、それは言葉としても骨格、構造が美しく、
歌われた時にはメロディーと一体化している。
一度制作されたなら、
その歌を歌詞とメロディーを引き離して考えることはできない。
つまり、タイトルを見れば唯一の歌詞が思い浮かぶ。
メロディーを聴けば歌詞が思い浮かぶ。
歌を聴けばその時の情景がフラッシュバックする。
そのような歌詞を、
良い歌詞であると私は定義したい。

ではそのように定義された良い歌詞を書くためには、
何を大切にすればいいのか。
それは素直に世界を見るということだと私は思う。
まるで湾曲したような、癖のある言葉を使ったとしても、
癖のある物語であったとしても、
心は素直に世界を見る。
メロディーに対しても個人的な解釈を入れず、
素直にメロディーの内側にある世界を見る。
描きたい世界の感情・交わし合った言葉・表情・仕草に焦点を当てて、
素直に見る。
見えた世界をそのまま描く。

なぜ歌を書きたくなるのか。
そこには感謝があるからなのだと私は思います。
人生に向けて、恋愛に向けて、友情に向けて、
感謝の気持ちがある時、それは歌になる。

今日は私の思う良い歌と
良くない歌の定義についてお話ししました。
これは極めて個人的な思想でもあります。

歌の制作は一人で完結することもできます。
でも、一人だけでは見えていなかった輪郭が
他者の視点が入ることで見えてくることもあります。
この辺りのことを私と話してみたい。
そう思われる方には、
そっと扉を開いています。

言葉と音楽の作詞対話会

メロディーから考える作詞講座|作詞家 Makoto ATOZI の個別作詞相談

 

 

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