何のために歌を書くのか。
これはとても根本的な問いです。
音楽を志す者が、
または音楽で道を立てる者が、
何のために歌を書くのか。
歌を書くという作業は同じでも、
その歌を全国ホールツアー、またはドームツアーで歌われることを想定して書くのか。
またはライブハウスで、
目の前にいる50人の観客に向けて歌を書くのか。
または、
たった一人の大切な人に向けて書くのか。
それぞれの立場には、
本当は違いはありません。
たった一人にも届き、同時に何万人にも届く歌を書ければ、それが最も強いのだと思います。
それでも、この時の意識の置き方の違いで、
歌の存在感は異なってきます。
私の場合、
いただいてきたオファーの多くは、すでに多くのリスナーを持つアーティストへの作詞です。
だから何千人、何万人という人々の前で歌われることを想定して歌詞を紡ぎます。
たった一人に向けて書き、
その相手が静かに受け止め、
心の宝物とするような歌は確かに尊い。
そこには偽りはありません。
ただ、もしも歌を書き続け、
それを仕事にしたいと考えるなら、
それだけでは、
個人的な恋愛観・人生観のおしゃべりに終わってしまうこともあります。
音楽的に突き詰めていくと、
時代、宗教、思想、ファッション、暮らし。
それらに連なる様々な歴史も大切になります。
アーティストの存在が大きくなるごとに、
自然とそれらの要素も歌の中に入り込むことになります。
一見、普通の恋愛の歌に聴こえながら、
その一節にある言葉に、
とても深い真理が書かれていることはよくあります。
パーソナルに歌を書くのか。
世界へ向けて何かを伝えようとして歌を書くのか。
この意識を過剰にするのではなく、
淡々と大きな歌を書くことができたなら一番良いと思います。
大きな歌と絵空事な歌は異なります。
本当に伝えたいこと。
世界(=相手)に向けて持っている思い。
それが本物の愛・思いであるのなら、
きっと歌の存在感は大きくなるはずです。
今書いている歌の射程距離はどれほどなのか。
目の前の一人のハートを撃ち、次々と前へ進んでいくような歌なのか。
それとも、遠く離れた誰かの人生にまで届いてしまうような歌なのか。
私たちは歌に何をのせたいのか。
あなたはどのような思いで音楽と向き合っていますか?
作詞は一人で完結させることもできますが、
第三者の視点が入ることで今まで見えていなかった輪郭が見えてくることがあります。
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詩人・作詞家
Makoto ATOZI
