【作詞講座コラム】作詞とファッション——歌詞に“時代の空気”を入れるために

作詞は言葉だけの技術ではありません。
字面だけで感動させようとして書いても、
なぜかうまく表現できないものです。
時代の空気を考えずに歌を書くと、
不思議とありきたりの歌詞になってしまうものです。

作詞とは、感情、物語を書くことだけではなく、
時代の気配、人の佇まい、選ばれた服、
街の温度まで感じ取る仕事である。
私はそのようにして歌を見ています。

歌は世につれ 世は歌につれ。

音楽と芸術、そしてファッションには密接な関係があります。
そのベースにはライフスタイル・それぞれの生活様式があり、
時代の中でそれらが融合して音楽の輪郭が立ち上がります。
80年代の代表的な音楽を聴けば不思議と
80年代のファッションが脳裏に浮かびます。
ファッションは思想です。
音楽もまた思想です。

楽器を弾き始めた少年少女が、
自分の好きなアーティストに憧れて服装を真似る感覚。
それは音楽の入口としてとても自然な行為です。

そうして歳を重ねるごとに、
なぜそのアーティストがその服を選んだのか。
それは熟考の結果なのか、
衝動なのか。
あるいは、その人の生き方から自然に滲み出たものなのか。
歳を重ねるほど、服の奥にある思想が見えてきます。

アイウエアのブランドネームを見ると、
デザイナー自身の名前をブランド名にするブランドもあれば、
Less Than Human、Bonnie Clydeなど、
普通に考えれば危うさや反骨を感じさせるネーミングを冠にするブランドもあります。

ブランドのネーミングには楽曲のタイトル付けに似た覚悟があります。
革新のエナジー、反骨精神、ロック・パンク精神、社会的主張、
それらを逆にとった愛・平和の表現。
一瞬で覚えられる力強いタイトルの付け方は、
ファッションブランドのネーミングやテーマからも学ぶことができます。

ファッションは人物の雰囲気を作り、
その独特の雰囲気は歌詞にも表れると私は思っています。

歌詞は感情だけではなく、観察から生まれます。

相手がどんな服を着ている人なのか、
どんな靴を選ぶ人なのか、服や靴の手入れの頻度はどうか、
髪をどう整える人なのか、どんな髪型なのか、
明るい色を着るのか、モノトーンを好むのか、
古着を着るのか、きちんとした服を着るのか。
そういう視覚情報があると、歌詞の人物が急に生きてきます。

例えば過去の恋を歌にするとき、
ビーチを思わせる古着を好む女性が笑顔で笑っている姿が忘れられないのか。
白いワンピースを着た黒髪の女性が笑顔で笑っている姿が忘れられないのか。
または普段着の着の身着のままの姿が忘れられないのか。

この空気感は歌に現れます。
それはそのまま時代感となって人々の心に届きます。

一見関係がないように見える音楽とファッションでありながら、
歴代のヒット曲はかなり密接にファッションと結びつき、
互いに影響を与え合っています。

ファッションの統一性、外しのような感覚と、
作詞の物語構築には似ているところがあります。

編曲にも作詞にも作曲にもファッション性のようなものがあります。
全身を同じテイストで揃えすぎると面白みがない。
けれど外しすぎると崩れる。
歌詞も同じで、世界観を統一しながら、
どこかに意外性や違和感を入れることで記憶に残る。

一見美しい、という話だけでは人はあまり感動しません。
悲しみや苦しみと向き合うときの人間の衝動と葛藤。
それらが物語に厚みと深みをもたらします。

歌には少しの毒を含むことで生命力が宿ることがあります。
それはファッションの時代感に似ています。
そのような意味では、もしかすると、
現代は歌の切り口が多い時代のようにも見えてきます。

音楽において個性は武器です。
普遍的なスタンダードな歌は強いけれど、
そこに個性があると尚強い。

語弊を恐れずにいうなら、
普段着としてユニクロやGUはとても優れています。
けれど、ドームツアークラスのステージで、ただ無難であることだけを目的に服を選ぶアーティストは少ないように思います。
ただ無難に整えるくらいなら、
1000円ほどで手に入れた古着のお気に入りのTシャツを着るかもしれない。
それが10万円や20万円のTシャツに見えたならアーティストとしては成功です。
逆もまた然りです。
歌が先か。佇まいが先か。

音楽・アーティストは時代を表現するアイテム・アイコンです。
それはファッションと同じく、自由であり、革新的である必要があります。

歌詞を書くためには、言葉だけを見るのではなく、
人が何を選び、何を身につけ、
どんな空気をまとって生きているのかを見る力も必要です。

今、この時代では、
どのような佇まいが流行しているのか。
時代の気配のようなものを歌に取り入れる。
それも音楽制作の感性として大切な一つの柱だと思います。

ちなみに日本では黒子のような衣装を羽織る男性作詞家が多いように感じています。
私自身も、普段は静かな装いを好みますが、
時にロックやパンクの思想を感じる服を選ぶことがあります。
ボーラーハット、ミュージックTシャツ、ロングヘア、細身のジーンズ。
そうした選択もまた、自分がどのような言葉を書く人間でありたいかという問いとつながっています。

作詞は一人で書いて完結させることもできますが、
第三者の視点が入ることで、
見えていなかった輪郭が見えてくることがあります。

歌詞について個別に相談したい方へ
30分×2回の作詞講座を行っています。

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詩人・作詞家
Makoto ATOZI

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