四次元ポケットはトイレの中で

 図書館からの帰り道。新調した自転車を走らせていました。

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 三輪車みたいな大きさの折り畳み自転車からグレードアップ。Yahooショッピングで安い順、一番最初に表示されていたロードバイク。

   白色のベースにパステルベージュのタイヤで汚れが目立つので、帰宅後は毎回タオルで磨いて部屋内で保管することにしました。

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   毎日、自転車の鎮座する寝室で寝袋で寝ています。このワンルームには神棚と仏壇もあります。それと仕事机と姿見鏡。

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 帰宅の道で自転車を走らせて、信号に差しかかったとき、前方から歩いてくる一人の男性がいました。

 彼は両手で口元に菓子パンを持ち、食べながら歩いてきました。僕に気づくと、彼はサッとジャンパーの右側のポケットへと菓子パンをしまい込む。

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 ははーん…と見抜きました。

 ああ、これは彼のルーティーン。歩きながら菓子パンを食べる。誰かとすれ違うと、ジャンパーの右側のポケットへとしまい込む。人が通り過ぎた後には、また菓子パンを取り出して両手で持って食べながら歩く。

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 歌人穂村弘さんのエッセイなどを思い出す。男性のポケットの中にある菓子パンのクリーム具合を心配しながら自転車を走らせました。

 人は鏡。

 あの男性と同じようなことを僕もたくさんしているんだろう。自分では気づいていない妙な仕草。きっとあるんだろうと思いながら、車社会の田舎で自転車移動をする52歳。

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 一人暮らしをしていると、自然とひとり言が増えてくる。

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 毎日、瞑想をしているので、気づきは持っている気持ちでいながらも、トイレの中でのひとり言が多い。トイレの窓は隣人と上の階のお二人の通り道にあり、用を足していると彼らの歩いていく音がよく聞こえる。

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 突然「よし頑張ろう!」とか「そうか!わかった!」とか「ありがとう!」など、大きな声を出してしまう。

 隣人は何思う人ぞ。

 「よし!よし!よし!」なんて言っていることもある。

 大きな声のひとり言でございます。

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 自分のことは自分ではよくわからないことが多い。この世界はみんな、許し合いの上に成り立っている。

 歩き方。食べ方。暮らし方。何かを蔑むのではなくて、その内側にある真心。純粋さ。情熱。諸行無常の良さなどを受け入れたい。

 「これでいいのだ」

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 人を責めるよりも先に、自分が本心で望む姿を追い求めよう。

 たとえそれが人から見たなら全くできていなかったとしても、たった1日の中でも何かがきっと昨日よりは一歩前進しているはず。

 人の仕草のいとおかしさよ。

 おかしさから生まれるいとしさは人の尊さよ。

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 追伸

 先日、ローソンでお店から出て自転車に乗ろうとしたら、隣の自転車から異様なオーラが漂っていました。

 ベージュのジャケット(推定4Lサイズ)の男性がおもむろにカレーライスを荷台に置いて、マーガリンの箱を開き、何をするのかとみていたら、マーガリンを四等分し、すべてをカレーライスに投入、まぜまぜ。

 ああああ、なんということを、なんとタフな身体、と余計な忠告をしようかと思いましたが、春だし、余計なことに関わりたくない僕は颯爽と業務スーパーへと駆け出しました。

 人は鏡なのでしょうか。

Makoto ATOZI